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「レヴィアタンには完璧なる獣ベヒモスと翼あるジズという仲間がいる。
それらも出てくると考えて、対策をとった方がいい」
ラダマンティスの言葉にサガとアイオロスは頷いた。

「空からの攻撃も考慮すると、女神たちを神殿に置いておくのは危険だ」
ギリシャ神話系の敵ならば神殿は意味を持つかもしれないが、レヴィアタンたちに通じるかは五分五分だろう。
では、どこに彼女たちを避難させるか。
二人の黄金聖闘士はしばし考え込む。
そして先に口を開いたのはアイオロスだった。

「女神たちには処女宮にいてもらう」
「何故だ?」
「あそこは十二宮のほぼ中心だし、空からだろうが陸からだろうが無傷では済まさないように出来る」
このときサガはあることに気がついた。
「双魚宮の薔薇か?」
「そうだ、その薔薇の香りを風に乗せて十二宮全体を守らせる。処女宮だけならば黄金聖闘士が何人かいれば気流を操作して薔薇の香りを建物に入れさせないようにできるだろう」
しかも、各宮にトラップを仕掛ければ、もっと効率的である。
理屈としては……。

「相手は不死身ともいえる存在だ。生半可なトラップでは突破されるぞ」
そう言うラダマンティスの危惧に、
「ならば双児宮のトラップでは立ち入ったものを無差別に異次元へ飛ばしておこう。手加減はしない」
と、サガが何か割り切ったような様子で答えたのだった。
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「レヴィアタンに対して物理的な距離とか安全圏など考えない方がいい。あれは海の檻の中にいたというのに、他の場所にいたはずの者を食ったという話がある」
戦場となるであろう聖域の海辺で、海将軍であるクリシュナがダイダロスに魔獣の話をする。
夜の海は闇が深く重い。そしてこの海の中に魔獣は潜んでいるのだ。
「どういうことですか」
「奴は強力な催眠術のようなものを使う。それに取り込まれた者が犠牲になるということだ」
「それは犠牲者の方がレヴィアタンに近づくということですか?」
「そうとしか考えられない。だから、あの女聖闘士は神話のアンドロメダ姫のように強固な岩場にくくり付けた方がいい」
レヴィアタンに魅入られたら、破滅に向かう女聖闘士を止めることに手間取る可能性がある。
相手の断言にダイダロスは言葉を失う。
そのようなことをすれば瞬や黄金聖闘士たちが魔獣と真正面からぶつかることになる。
しかも場所移動が出来なくなってしまうのだ。

他に方法がないのか、ダイダロスは考え込んだ
「亡霊の正体は分かるか?」
カノンの問いにミーノスは薄く笑う。
「一般人でした」
もともと凶悪さで名を馳せていた海賊とのこと。
それを聞き海将軍は、そうかと返事をした。
「面倒そうな相手でしたら、あなたに譲りますよ」
相手の意味ありげな言葉に、海側の筆頭将軍は眉を顰めた。

『面倒な相手……』
どうやら向こうには勘付かれたようである。
レヴィアタンがその身に取り込んだ者を手駒にしているのなら、過去に犠牲となったかもしれない海闘士などを出されれば戦況は一気に厳しくなる。
だからといってそれらの始末を、他の聖闘士や冥闘士たちに任せるわけにはいかない。
仲間がレヴィアタンに支配されているのならば、きっちりと解放するのが海将軍の責務なのだから。
それでもそのような者はいないと彼は心の何処かで思っていた。
『レヴィアタンと一つになれば、永遠を生きられる』

突然聞こえてきた声に仮眠を取っていたジュネは目を覚ました。
「誰!」
そう叫んだとき、レヴィアタンに付けられた腕の刻印が疼く。
『何も怖いことはない。苦しみも憎しみも、全てたいしたことではなくなる』
このとき彼女は背後に人の気配を感じた。
しかし、振り返っても誰もいない。
(……一体何処に)
仮面を着けて周囲を警戒する。
いつの間に入り込まれたのだろうか。
だが、牢屋の中も外も静かである。

腕の疼きが痛みを伴う。
『さぁ、我々と一つになろう』
いきなり暗闇の中で二つの目玉だけが現れた。
ジュネは息をのむ。魔物? 幻? 
ところが次の瞬間、その二つの目玉を何者かが掴んだ。

「レヴィアタンも面白いことをしますね」
暗闇から現れたのは、グリフォンの冥衣を纏ったミーノス。
彼はいつの間にか牢屋に入り込んでいた。
この急展開にジュネは何が起きたのか分からない。
そして牢屋の外には同じようにガルーダの冥衣を纏うアイアコスがいる。
ミーノスはジュネに向かって微笑む。
「この亡者は冥界で裁きます」
彼が目玉を掴んだ手を横に動かすと、ジュネは自分の背後から何かがはがれた気がした。
悲鳴と共に。
「おい、聖闘士達が来たみたいだぞ」
アイアコスの言葉通り、牢屋へ慌ててやって来た者たちの声が響く。
周囲は一気に騒々しくなった。
「たとえレヴィアタンを倒しても、君になにかあったのならその勝利に意味はない。絶対に守ってみせる。信じてほしい」

彼は牢の鉄格子に手をかけて中に居る少女を励ます。
彼女は仮面をしており、周囲の暗さもあって様子はイマイチ分からない。
でも、頷いてくれたことで彼はほっとした。

ただ、映画のような場面を見ることになった瞬は、イオの言葉に力づけられながらも何か割り切れないモヤモヤしたものを感じていた。
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