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今回は、星矢×沙織派の人たちにとっては微妙な気持ちになると思います。たぶん。
ということで、自己責任でお願いします。
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 ベヒモス化したレヴィアタンは、海辺から発せられる光を見て身体が動かなくなった。
 動こうとすればするほど、身体が固くなってゆくのだ。

 海にあった霧が晴れてゆく。
「アイギスが発動した。全員下がれ!」
 サガの号令に、海辺にいた黄金聖闘士たちは一斉に後退する。
 アイギスの光が、海辺に上陸しようとしていたレヴィアタンの傀儡たちを次々と石に変えてゆく。

「これはいったい……」
 瞬もまたアイギスの圧倒的な力に驚く。
 何よりも星矢の聖衣が変化したのだ。
「一体何が……」
 星矢自身も驚いていた。
 しかし、クリシュナはそんな彼に自分の槍を渡す。
「太古の女神であるメデューサ様は破邪の力を持っている。それは絶対的なもの。ゆえにその力を使うには二つの闘衣を同じ場所にいさせないとならない」
 それがペガサスの聖衣とクリュサオールの鱗衣だった。
 メデューサの力がペガサスの聖衣に移るか、クリュサオールの鱗衣に移るかは、その場にならないと分からないのだが。

「今回はお前が選ばれた。ならば黄金の槍を使え」
 そう言ってクリシュナがアイギスを持つ。
 星矢は彼の説明に頷いたあと、「いけぇぇぇぇぇ」と叫びながら、黄金の槍をネビュラチェーンに沿って投げたのだった。
 

 海辺では、レヴィアタンの戦士たちを黄金聖闘士たちが次々と撃破していた。
 一撃で倒さないと、戦闘に関する情報をレヴィアタンへ持ち帰られてしまう。
 その為、彼らは自らの技を封じて、事態の処理に当たっていた。

 だが、レヴィアタンがベヒモス変化を起こしたのである。
 こうなると向こうに自分たちの能力が知られてしまうのを覚悟の上で、攻撃を仕掛けないとならない。
 余り長く敵のベヒモス状態を見続ければ、自分たちもまた狂う可能性があるのだから。

 彼らは楽観をしたりはしなかった。

「ジュネさん、貴女は悪くはない!」
 過去の傷に押しつぶされそうになっている恋人を、瞬は力一杯抱きしめる。
「僕にも背負わせて欲しい……」
 瞬はジュネの頬に手を添えた。

 星矢とクリシュナはギョッとして視線を逸らす。
 しかし、瞬がジュネを落ち着かせたところで、危機的状況は何一つ解消されてはいない。
 時間が経てば、誰かが犠牲になるだろう。

(アイギスに頼るなと言われているけど……)

 それでも仲間たちを守りたい。
 あのレヴィアタンを倒さないと、聖域もこの海も世界もメチャメチャになる。
(いったいどうしたら!)
 星矢は自分に何が出来るのかと自問自答した。
 このとき、持っていたアイギスが急に重くなったような気がした。
「えっ?」
 盾から細かい水のようなものが発散され、星矢とアイギスを包み込む。
 同時に星矢の聖衣が光りだした。

「アイギスが力を発動したようです」
 処女宮では沙織がユリティースたちにそう告げる。
「やはりメデューサさまの力は衰えてはいなかった……」
 聖域の守護女神はほっとした表情を見せた。
 レヴィアタンが天に向かって咆哮する。
 身体が透けたり現れたりを繰り返していくうちに、空に溶け込み始めた。
 その姿を見て、星矢や瞬と共にジュネを守っていたクリシュナは「ベヒモス変化……」と呟く。

「ベヒモス変化?」
 何のことかと星矢が振り向いたとき、ジュネが声を出して暴れる。
「ジュネさん!」
 瞬は鎖に手を添えながら、彼女に駆け寄った。
「落ち着いて、大丈夫だから!」
 しかし、ジュネは首を横に振る。
「私が……生きているなんて……」
「何を言っているんだ!」
 姉弟子の言葉に瞬はギョッとする。
 するとクリシュナが言葉をかける。
「ベヒモスは完璧なる獣、神の傑作といわれる存在だ」
「それがどうしたのですか」
「彼女は今、己の中に潜む辛い記憶を呼び覚まされている。その罪を償うために、ベヒモスに身を捧げようとする思考に陥っているのだ」

 完璧なる生き物の血肉になる。
 それが赦しを得る方法だと、思い込んでいるという。
「問題は、きっと他の場所でも同じようなことが起きているということだ」

 クリシュナの推測通り、ベヒモス変化を見ていた雑兵たちや一部の聖闘士達がフラフラとした足どりで海へ向かおうとする。
 それを、まだ正気を保てている他の者たちが止めているという状態だった。

「俺たちをエサにして、力を回復しようとしているって事か」
 星矢はベヒモス化しているレヴィアタンを見た。
 もう空の光に溶け込んでおり、形らしきものは見えない。
 

 
レヴィアタンは己の送り込んだ人形たちの戻りが悪いことに苛立ちを感じ始めていた。
実力の異なる人形たちを送り込むことによって、愚かしい人間たちは色々な技を駆使して闘う。
その情報がある程度たまったら、人形たちを自分のところへ戻し情報を得る。
そうして次に送り込む人形は、より強い性能を持って人間たちを滅ぼすのだ。

ところが今回は、人形たちがほとんど戻ってこない。
もう何度、強さのレベルを上げただろうか。
これでは自分の手駒だけがなくなってしまう。

──オノレ……。

この近辺に属する海の者たちから、アンドロメダ姫は魔獣退治の専門家と言われた。
その者を生きたまま喰らえば、難なく彼女が倒した魔獣達の情報も得られる。
しかし、それがいきなり海将軍とやらに捕らえられ牢獄に封じられてしまった。

──早クあんどろめだ姫ヲ食ワネバナラヌ。

そして海将軍をも食う。

レヴィアタンは咆哮するとその身体を光らせた。
一気に片をつける。

──逃スモノカ。

ちょうど空にはジズが来ている。

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