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深紅のバラがジュネの胸を貫いたように見えた。
花びらが血しぶきのように舞う。
「ジュネ!」
シャイナが駆け寄る。
魚座の黄金聖闘士はその様子を冷ややかな眼差しで見ていた。
「シャイナさん……」
「黄金聖闘士相手に勝負を挑むなんて無謀を通り越して、バカとしかいいようがないよ!」
しかし、ジュネは満足そうに薄く笑った。
『私はあなたを乗り越えてみせます』
そう言ってジュネはアフロディーテの前に立ったのだ。
すでに二人の間には緊迫したものがあり、シャイナも魔鈴も立ち入る隙がない。
そして数秒後、アフロディーテが深紅のバラを放ったのである。
ジュネは服のベルトを鞭のように使い、バラを叩き落とそうとした。
しかし、バラはベルトを裂いて、彼女の胸へと突き進む。
勝負は一瞬にしてついたのである。
「ジュネ。深呼吸をしろ」
魔鈴の言葉に、ジュネは大きく息を吸う。
そして自ら上体を起こしてみると、アフロディーテのバラは茎の部分が砕かれていた。
よくよく見るとネックレスを絡ませた胸の花は、花芯部分が金属で出来ている。造花だとは思っていたが、どうも特別な金属で作られているらしい。
しかも、ネックレスのチェーンがその上にかかっていた。
バラはこの二つを砕いてジュネの胸に届くことが出来なかったのである。
「先に進むがいい」
アフロディーテはそう言って、その場から立ち去った。
「……」
ジュネは茎と幾つかの花びらを失ったアフロディーテのバラを手に持つ。
アンドロメダ島での粛正では、仕方がないとは言え逃げてしまった。
だが、その後悔の念が絶えず、癒えない痛みが彼女の心を苛む。
今も胸は痛い。
しかし、アフロディーテに直接ぶつかったことで、あの時自分が生き延びたことには意味があったのではと思えた。
「試合に勝って、勝負に負けたというところかな」
双魚宮での出来事を神殿から何となく察知していたアイオロスは、楽しそうに笑った。
花びらが血しぶきのように舞う。
「ジュネ!」
シャイナが駆け寄る。
魚座の黄金聖闘士はその様子を冷ややかな眼差しで見ていた。
「シャイナさん……」
「黄金聖闘士相手に勝負を挑むなんて無謀を通り越して、バカとしかいいようがないよ!」
しかし、ジュネは満足そうに薄く笑った。
『私はあなたを乗り越えてみせます』
そう言ってジュネはアフロディーテの前に立ったのだ。
すでに二人の間には緊迫したものがあり、シャイナも魔鈴も立ち入る隙がない。
そして数秒後、アフロディーテが深紅のバラを放ったのである。
ジュネは服のベルトを鞭のように使い、バラを叩き落とそうとした。
しかし、バラはベルトを裂いて、彼女の胸へと突き進む。
勝負は一瞬にしてついたのである。
「ジュネ。深呼吸をしろ」
魔鈴の言葉に、ジュネは大きく息を吸う。
そして自ら上体を起こしてみると、アフロディーテのバラは茎の部分が砕かれていた。
よくよく見るとネックレスを絡ませた胸の花は、花芯部分が金属で出来ている。造花だとは思っていたが、どうも特別な金属で作られているらしい。
しかも、ネックレスのチェーンがその上にかかっていた。
バラはこの二つを砕いてジュネの胸に届くことが出来なかったのである。
「先に進むがいい」
アフロディーテはそう言って、その場から立ち去った。
「……」
ジュネは茎と幾つかの花びらを失ったアフロディーテのバラを手に持つ。
アンドロメダ島での粛正では、仕方がないとは言え逃げてしまった。
だが、その後悔の念が絶えず、癒えない痛みが彼女の心を苛む。
今も胸は痛い。
しかし、アフロディーテに直接ぶつかったことで、あの時自分が生き延びたことには意味があったのではと思えた。
「試合に勝って、勝負に負けたというところかな」
双魚宮での出来事を神殿から何となく察知していたアイオロスは、楽しそうに笑った。
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「あっ!」
双魚宮へ向かう階段の上で、ジュネは急に立ち止まった。
身につけていたネックレスが留め金のところで切れたのである。
(まさか瞬の身に何か……)
嫌な予感がする。
しかし、彼がどこにいるのかわからないし、今は目の前の黄金宮に向かわなくてはならない。
彼女はネックレスを素早く拾うと、胸に付けている花に巻き付けた。
(瞬……。無事でいて!)
不安を抱えながら、ジュネは最後の黄金宮へと向かった。
☆☆☆
「氷河さん、氷河さん!」
恋人の声で彼は目を開ける。
「絵梨衣?」
「映画、終わったわよ」
周囲を見回すと、観客たちが出口へ向かって歩いている。
映画自体は沙織が持っていた株主優待券で入ったので、特に惜しいとは思わない。
絵梨衣のほうはというと、人気映画が見れるのは嬉しいし、氷河から映画に行こうと誘われたのはもっと嬉しい。
しかし、実際に見る段階で隣で寄りかかるように眠られては映画鑑賞に身がはいらない。
あとで美穂に感想を言うことになっていたのだが、たぶんトンチンカンなものになってしまうのは確実だった。
「いい夢を見たよ」
氷河は大きく伸びをする。
「どんな夢?」
「高嶺の花だった絵梨衣を嫁にもらえる夢」
その言葉に彼女は顔を赤くした。
「あっ……、高嶺の花って……そんなことないわ」
シドロモドロになっていると、氷河が席を立った。
「さて、帰るか」
そういって彼は恋人に手を差し伸べる。
絵梨衣を嬉しそうに、その手を取ったのだった。
(しかし、妙にリアルな夢だったな……)
氷河は思い返す。
夢の中の絵梨衣は、聖域にて軟禁状態である女神エリスの巫女だった。
彼女を手に入れるには、自分がめざましい働きをしてその願いを言える立場にならなくていけない。
そのため、聖闘士だった彼は短期間に魔獣を十数頭倒すという荒技をしてのけた。
この働きが認められ、彼は絵梨衣を得ることができた。これは彼女が聖域側の巫女でなかったことも幸いした。
女神アテナに仕える巫女の場合は、このようなことは許されなかったからである。
当時、敵対する女神の巫女ゆえに氷河に与えるという格好がついたのだ。
(でも、あれは何だったんだ?)
絵梨衣を得たときに、誰かが自分のことを険しい眼差しで見ていた。
それが絵梨衣に思いを寄せる男の登場を意味する予知夢だとしたらイヤ過ぎる。
氷河は正夢にならないことを願った。
双魚宮へ向かう階段の上で、ジュネは急に立ち止まった。
身につけていたネックレスが留め金のところで切れたのである。
(まさか瞬の身に何か……)
嫌な予感がする。
しかし、彼がどこにいるのかわからないし、今は目の前の黄金宮に向かわなくてはならない。
彼女はネックレスを素早く拾うと、胸に付けている花に巻き付けた。
(瞬……。無事でいて!)
不安を抱えながら、ジュネは最後の黄金宮へと向かった。
☆☆☆
「氷河さん、氷河さん!」
恋人の声で彼は目を開ける。
「絵梨衣?」
「映画、終わったわよ」
周囲を見回すと、観客たちが出口へ向かって歩いている。
映画自体は沙織が持っていた株主優待券で入ったので、特に惜しいとは思わない。
絵梨衣のほうはというと、人気映画が見れるのは嬉しいし、氷河から映画に行こうと誘われたのはもっと嬉しい。
しかし、実際に見る段階で隣で寄りかかるように眠られては映画鑑賞に身がはいらない。
あとで美穂に感想を言うことになっていたのだが、たぶんトンチンカンなものになってしまうのは確実だった。
「いい夢を見たよ」
氷河は大きく伸びをする。
「どんな夢?」
「高嶺の花だった絵梨衣を嫁にもらえる夢」
その言葉に彼女は顔を赤くした。
「あっ……、高嶺の花って……そんなことないわ」
シドロモドロになっていると、氷河が席を立った。
「さて、帰るか」
そういって彼は恋人に手を差し伸べる。
絵梨衣を嬉しそうに、その手を取ったのだった。
(しかし、妙にリアルな夢だったな……)
氷河は思い返す。
夢の中の絵梨衣は、聖域にて軟禁状態である女神エリスの巫女だった。
彼女を手に入れるには、自分がめざましい働きをしてその願いを言える立場にならなくていけない。
そのため、聖闘士だった彼は短期間に魔獣を十数頭倒すという荒技をしてのけた。
この働きが認められ、彼は絵梨衣を得ることができた。これは彼女が聖域側の巫女でなかったことも幸いした。
女神アテナに仕える巫女の場合は、このようなことは許されなかったからである。
当時、敵対する女神の巫女ゆえに氷河に与えるという格好がついたのだ。
(でも、あれは何だったんだ?)
絵梨衣を得たときに、誰かが自分のことを険しい眼差しで見ていた。
それが絵梨衣に思いを寄せる男の登場を意味する予知夢だとしたらイヤ過ぎる。
氷河は正夢にならないことを願った。
この日、紫龍は意外なものを見てしまった。
(一輝が大人しく水運びをしている)
そんな彼の横では、エスメラルダが嬉しそうに駕籠を持っていた。
夕食の準備のはずが、やはり野外パーティに雪崩込んだのである。
一輝を強引に連れてきたオルフェの実力も尊敬に値するが、そんな彼は少し席を外すといって老師と何処かへ行ってしまった。
代わりに牡牛座の黄金聖闘士であるアルデバランが来てくれたのだが……。
「紫龍と春麗は、辛いものは大丈夫か?」
アルデバランの問いに二人は頷く。
「ならば、もう一品増やせるな」
そういうと彼は石を積んでもう一つ、即席のかまどを造った。
すると、女官の一人が大きな鍋を持ってきたのである。
彼が参加すると女官たちも参加しやすいらしい。
今もアルデバランの周囲には幾人かの女官たちが料理の準備をしていた。
「他の黄金聖闘士様は、(性格というか考えていることが)よく分からなくて……」
女官たちの言葉に紫龍は苦笑いしてしまった。
(一輝が大人しく水運びをしている)
そんな彼の横では、エスメラルダが嬉しそうに駕籠を持っていた。
夕食の準備のはずが、やはり野外パーティに雪崩込んだのである。
一輝を強引に連れてきたオルフェの実力も尊敬に値するが、そんな彼は少し席を外すといって老師と何処かへ行ってしまった。
代わりに牡牛座の黄金聖闘士であるアルデバランが来てくれたのだが……。
「紫龍と春麗は、辛いものは大丈夫か?」
アルデバランの問いに二人は頷く。
「ならば、もう一品増やせるな」
そういうと彼は石を積んでもう一つ、即席のかまどを造った。
すると、女官の一人が大きな鍋を持ってきたのである。
彼が参加すると女官たちも参加しやすいらしい。
今もアルデバランの周囲には幾人かの女官たちが料理の準備をしていた。
「他の黄金聖闘士様は、(性格というか考えていることが)よく分からなくて……」
女官たちの言葉に紫龍は苦笑いしてしまった。
瞬は双魚宮へ向かう。
間に合うのか。
いいや、間に合ってみせる。
この心臓をバクバクと言わせているのは運動量が原因ではなく、恋人をあの男に会わせてはならないという不安によるものだった。
「ジュネさん!」
双魚宮に入ると、彼女の名を叫んだ。
しかし反応はなく、彼はそのまま奥へと突き進む。
そして瞬は見てしまった。
魚座の黄金聖闘士の腕の中にいる恋人の姿を……。
その胸は血で赤く染まっている。
そして魚座の黄金聖闘士であるアフロディーテが、愛おしそうに彼女の髪を手で梳いていた。
(許せない)
「ジュネさんに触るな!」
瞬は自分の叫び声によって、意識を取り戻す。
「あっ……」
周囲を見回すと、薄暗い石造りの部屋に寝かされていた。
部屋にはランプが置かれており、ほのかに明かりを灯している。
「……」
近くにはアンドロメダ座のパンドラボックスがあり、紙がそばに置かれていた。
『しばらく大人しくしていること / アイオロス』
彼は我に返る。
(ジュネさん!)
先程の夢が正夢になるのではないか。
とにかくここから脱出をすることにした。
間に合うのか。
いいや、間に合ってみせる。
この心臓をバクバクと言わせているのは運動量が原因ではなく、恋人をあの男に会わせてはならないという不安によるものだった。
「ジュネさん!」
双魚宮に入ると、彼女の名を叫んだ。
しかし反応はなく、彼はそのまま奥へと突き進む。
そして瞬は見てしまった。
魚座の黄金聖闘士の腕の中にいる恋人の姿を……。
その胸は血で赤く染まっている。
そして魚座の黄金聖闘士であるアフロディーテが、愛おしそうに彼女の髪を手で梳いていた。
(許せない)
「ジュネさんに触るな!」
瞬は自分の叫び声によって、意識を取り戻す。
「あっ……」
周囲を見回すと、薄暗い石造りの部屋に寝かされていた。
部屋にはランプが置かれており、ほのかに明かりを灯している。
「……」
近くにはアンドロメダ座のパンドラボックスがあり、紙がそばに置かれていた。
『しばらく大人しくしていること / アイオロス』
彼は我に返る。
(ジュネさん!)
先程の夢が正夢になるのではないか。
とにかくここから脱出をすることにした。
「カメレオン座、先に進むつもりか」
水瓶座の黄金聖闘士、カミュの言葉にジュネは驚く。
「えっ?」
「双魚宮へ向かいたくはないというなら、ここから戻れ。あとは私が教皇とアイオロスに言っておく」
意外な言葉に、彼女は戸惑う。
何故、黄金聖闘士がそのようなことを言うのだろうかと……。
自分とアフロディーテの確執は、聖域にとって無かったことにしたいはずではないのか。
「──私は進みます。ここで下がることは、私にとって全てのことから逃げることなんです」
普通ならば黄金聖闘士は雲の上の存在である。世が世ならば一生会わずに済む相手であろう。
しかし、縁なく会うことが無かったということと、逃げ回って会わずにいたということは結果が同じでも性質がまるっきり違う。
そしてダイダロスの弟子として、後者は絶対に選びたくはなかった。
「ならば、私の一撃を乗り越えろ」
カミュは赤いバラを手に持つ。
「……」
今までの黄金聖闘士達は、バラだけは使わなかった。
その意味が今、ジュネには分かったような気がした。
(怖い……)
脳裏に浮かんだのはアンドロメダ島で行われた粛清。
あの時のバラの花は、怖さと美しさを兼ね備えていた。
「行くぞ」
ジュネは頷く。
ここで逃げ出したら、聖域そのものからも逃げ出したくなる。
だが、意地でもそんな無様な真似をしたくはなかった。
水瓶座の黄金聖闘士、カミュの言葉にジュネは驚く。
「えっ?」
「双魚宮へ向かいたくはないというなら、ここから戻れ。あとは私が教皇とアイオロスに言っておく」
意外な言葉に、彼女は戸惑う。
何故、黄金聖闘士がそのようなことを言うのだろうかと……。
自分とアフロディーテの確執は、聖域にとって無かったことにしたいはずではないのか。
「──私は進みます。ここで下がることは、私にとって全てのことから逃げることなんです」
普通ならば黄金聖闘士は雲の上の存在である。世が世ならば一生会わずに済む相手であろう。
しかし、縁なく会うことが無かったということと、逃げ回って会わずにいたということは結果が同じでも性質がまるっきり違う。
そしてダイダロスの弟子として、後者は絶対に選びたくはなかった。
「ならば、私の一撃を乗り越えろ」
カミュは赤いバラを手に持つ。
「……」
今までの黄金聖闘士達は、バラだけは使わなかった。
その意味が今、ジュネには分かったような気がした。
(怖い……)
脳裏に浮かんだのはアンドロメダ島で行われた粛清。
あの時のバラの花は、怖さと美しさを兼ね備えていた。
「行くぞ」
ジュネは頷く。
ここで逃げ出したら、聖域そのものからも逃げ出したくなる。
だが、意地でもそんな無様な真似をしたくはなかった。